研究概要 |
アポトーシス抑制遺伝子を使用した,新しい癌転移抑制療法を確立することを目的として,BAG-1・BADを中心とした多角的な解析から、転移を抑制させるために以下の諸点を明らかにしてきた。 1.胃癌細胞において,遺伝子導入によりBAG-1を過剰発現させると,BAG-1は細胞質に均一に存在し,ケラチンやアクチンと会合していること.しかし正常上皮細胞では,主にゴルジ野にBAG-1が蓄積していることを見出した. 2.下咽頭癌において,BAG-1が高発現していること.また,BAG-1の細胞内局在が核にある癌細胞は,増殖能が高く,このような癌を持つ患者は,放射線照射後の再発率が高いことを見出した. 3.アノイキス時,アポトーシス誘導分子BADは,脱リン酸化されることによって,活性化されていること,またこれによりアノイキスの誘導と関連していることを発見した. 4.BADの過剰発現によってアノイキスが促進されることを見出した. 本研究の結果から,BAG-1の細胞内局在の把握によって,放射線照射後の再発の予測判断が可能になると期待できること,また,アノイキスに関わる因子として,BADの発現量及びリン酸化レベルの変化は重要と思われた。現在,BAG-1の作用を抑制させるため,dominant negativeに作用するベクターを作成中である.
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