研究概要 |
卵白アルブミン(Ova)をコードするplasmid DNA(pDNA)であるpCMV-ovaを皮膚に免疫することによって,Ova特異的な全身系免疫反応が誘導され,その抗原特異的CD4+ T細胞はIFN-γを産生するTh1細胞であることを確認した.一方,pCMV-ovaを胃粘膜に免疫することにより,粘膜免疫(Ova特異的糞便IgA抗体)が誘導された.これらのマウス由来のova特異的CD4+ T細胞もIFN-γを産生し,Th1優位の粘膜免疫が誘導されることが示された. つぎに,pCMV-ovaを免疫したマウスにovaを吸入させ,Th1優位の粘膜免疫が肺でも誘導されるかを検討した.pCMV-ovaを胃粘膜に免疫後,Ovaを吸入させたマウス由来の縦隔リンパ節細胞は,Ova刺激にてIFN-γを産生した.さらに,気管支肺胞洗浄液(BALF)にはIFN-γとOva特異的IgA抗体が検出され,気道粘膜にもTh1優位の粘膜免疫が誘導されることが確認された.一方,pCMV-ovaを皮膚に免疫した場合には粘膜免疫は誘導されなかった. Ova吸入誘発肺好酸球浸潤マウスモデルを用いた検討により,遺伝子免疫の肺好酸球浸潤に及ぼす影響について検討した.Ovaを水酸化アルミニウム(alum)とともにBalb/cマウス腹腔に2回投与後,4週目にOvaを吸入させることにより肺好酸球浸潤モデルを作成した.このモデルマウスを用いて,皮膚または胃粘膜にpCMV-ovaを免疫することにより肺好酸球浸潤が抑制されるかを検討したところ,pDNAを皮膚に免疫するよりも,胃粘膜へ免疫したほうが効果的であることが判明した.さらに,Ovaとは異なる抗原であるβ-galをコードするpACB-LacZを用いた粘膜遺伝子免疫でも,Ova吸入によって誘発される肺好酸球浸潤を抑制できることが示された.この理由として,粘膜遺伝子免疫により気道粘膜でのTh1優位の免疫が誘導されてIFN-γの濃度が肺局所で高まる結果,Th2細胞からのIL-5などの産生が抑制され,好酸球の浸潤が阻止されるものと推定された.これらの結果は,ひとつのアレルゲンをコードするpDNAを粘膜に免疫することにより,複数のアレルゲンによって誘導される肺好酸球浸潤が抑制できることを示唆している.
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