ミトコンドリア病の表現型とその成因の解析-遺伝子治療への基礎的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670487
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 佐藤 忍 横浜市立大学, 医学部・附属病院, 講師 (80244424)
• 研究分担者: 関原 久彦 横浜市立大学, 医学部, 教授 (80126094) ; 大西 秀樹 横浜市立大学, 医学部, 講師 (30275028) ; 斎藤 達也 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (90205659)
• キーワード: ミトコンドリア病 / 筋細胞分化 / インスリン作用不全 / 発育障害 / 消化管機能異常

研究概要

ミトコンドリア病はミトコンドリアDNA(mtDNA)異常に基ずく遺伝性疾患で、生体の主要なエネルギー産生系が障害され全身の機能異常mitochondorialcyopathyを呈する。本研究では未だ充分に明らかにされていない全身の表現型を解析するとともに、その遺伝子治療の基礎となる動物実験モデルの研究を行った。細胞レベルの検討ではインスリン作用の主要な標的臓器である筋肉と脂肪組織の代表的な培養細胞系であるC_2C_<12>細胞と3T3-L1細胞を用いて実験を行った。各々の培養細胞を分化させる前にエチジウムブロマイド(EB) (1-1000ng/ml)処理を継代中7日間行い、各々2%ウマ血清培養液、thiazolidinedioneで分化誘導を行うと、いずれの細胞においても100ng/ml以上の濃度で筋細胞、脂肪滴の貯留は抑制された。EB処理後は高濃度ブドウ糖、ピルビン酸、ウリジン培養液に添加した。分化したC_2C_<12>細胞に250ng/mlのEBを3日間培養処理するとインスリン刺激による糖輸送活性は約40%抑制された。これらの結果はmtDNA異常が筋肉、脂肪細胞の分化の障害をもたらし、さらに成熟細胞においてもインスリン作用を障害することを示唆すると考えられる。さらに、本症のヒトでの表現型の解析をすすめたが、mtDNA異常により胎児の発育障害、流産の頻度の増加、消化管機能異常として腸閉塞をおこすことを見い出した。

研究成果

• [文献書誌] Noguchi Y et al: "Insulin resistance in cancer patients is associated with enhanced tumor necrosis factor-alpha expression in skellal muscle" Biochem Biophys Res comm. (in press).
• [文献書誌] Terauch Y,Tsuji Y,Satoh S.et al: "Increased insulin sensilivity and hypoglycemia in mice lacking the p85f subunit of phosphoinositide 3-kinase" Nature Genetics. 21・2. 230-235 (1999)
• [文献書誌] Onishi H,et al,Satoh S: "Pancreatic exocrine dysfunction associated with mitochondrial tRNAleu(UUR) mutation" J Medical Genetics. 35・3. 255-257 (1998)
• [文献書誌] Ito,T.Noguchi Y.Satoh S: "Expression of facelitative glucose transporter in lung carcinoma" Mod Pathol. 11・5. 437-443 (1998)
• [文献書誌] Mukasa K.et al: "Dehydroepiandrosterone(DHEA)ameliorates the insulin sensitivity in older rats" J Steroid Biochem Molec Biol. 67・4. 355-358 (1998)
• [文献書誌] Arai T.et al: "Ocular arterial flow hemcdynamics in patient with diabetes mellitus" J Ultrasound Med. 17. 675-681 (1998)