1 ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)を使った実験系で、血管外遊走を阻止するモノクローナル抗体4C8を得た。この抗体の認識する4C8抗原はヒト末梢血T細胞、単球に発現し新規と考えられる分子である。 2 この抗体はヒトT細胞のHUVECへの接着を阻止せず、接着後の内皮細胞間をくぐり抜けるtransmigration過程を選択的に阻止した。 3 この抗体による阻止実験により、T細胞のtransmigrationがインテグリン分子を介さないことが明らかになった。 4 固相化したこの抗体により、CD26hiT細胞選択的にchemokineticな細胞運動が亢進し、またアクチンの重合化が誘導されることが明らかになった。すなわち、内皮細胞上のリガンドによるT細胞4C8抗原刺激はT細胞の運動性を高め、これがtransmigrationを引き起こすと考えられた。 5 これまで内皮細胞接着後のT細胞のtransmigrationに関わる分子群は長く不明であったが、今回の研究によってその一部が明らかになった。 6 さらにこの抗体の添加によって、T細胞と関節滑膜細胞との共培養によって産生されるTNF-a、IL-8の産生が有意に阻止された。 7 抗体を使ったイムノスクリーニングで、4C8抗原をコードする遺伝子の大腸菌発現クローニングを試みた。しかし、陽性プラークを得ることができなかった。そこで方法を変更し、COS7を使った発現クローニングが進行中である。
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