持続感染ウイルスに対する免疫と持続感染に続発する腫瘍に対する免疫の破綻のメカニズムを解析し、遺伝子治療をはじめとする新規治療法を開発している。これまで肝癌細胞に導入する各種遺伝子:1)B7遺伝子、2)AFP遺伝子、3)HCVの構造遺伝子、4)p53遺伝子、5)ribosomal S6 kinase、6)癌抑制性tob遺伝子を持つ発現アデノウイルスベクターを作成した。それぞれの遺伝子を各種肝細胞癌に導入して、増殖能・表面抗原・抗原性・生着性について検討を行っている。これまで以下の結論を得た。1)Hepa1-6と同系のC57/B6マウスに細胞株を移植すると、野生株に比較してB7遺伝子導入細胞株は効率よくT細胞を誘導する。脾臓より分離して、クローン化したT細胞はCD8(+)、CD28(+)のキラーT細胞であった。このキラーT細胞が認識するエピトープを決定し、報告した。更に平成10年度は、C型肝炎ウイルスについて以下の結果を得ている。1)癌細胞の新規エピトープを同定した。2)正常細胞の細胞分裂を障害する領域を同定した。3)細胞内正常シグナル伝達を阻害する作用領域を決定した。以上が発癌と強く関わっていると考えられる。また、4)癌抑制遺伝子Tobをウイルスベクターを使ってマウス癌性腹膜炎に投与して、癌治療に良好な結果を得ている。
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