研究概要 |
本研究では,珪酸化合物によるヒトTリンパ球活性化におけるFas/Fas-ligand系の関与が想定される事より,[A]試験管内にて珪酸化合物によりヒト末梢血単核球を刺激し,その活性化に伴う変化を[I]細胞のapoptosisの同定,[II]apoptosisを誘導するFasおよびFas-ligandの発現,[III]その他のapoptosis関連遺伝子の発現,に注目して観察することを目的としている.また,[B]生体内での慢性暴露モデルとしての珪肺症症例よりリンパ球を分離し,[I]apoptosisを誘導するFasおよびFas-ligandの発現,加えて,[II]自己による可溶性Fasの産生によって,apoptosisを介する活性化クローンの排除機構の破綻を想定し,膜型Fasと可溶性Fasの発現の度合を検討,[III]Fasおよび Fas-ligand遺伝子の突然変異、あるいはその情報伝達経路のFADD,MACH等の遺伝子の発現異常や突然変異によりapoptosisを介した活性化クローンの排除機構が破綻する可能性の検討,[IV]その他のapoptosis関連遺伝子の発現,に注目して観察することも目的としている.現在までのところ,[A]in vitroでは,Tunel法・電顕的観察・DNA-ladder法のいづれにても珪酸化合物による末梢血単核球のapoptosisの出現を確認しており,その際にFas,Fas-ligandあるいはCaspase遺伝子群の発現増加を認めている.また,実際の症例では,血清可溶性Fasの高値mRNAレベルでの可溶性Fasの相対的発現過剰を確認し,可溶性Fas以外のvariant messagesの検出も行った.またこれらの因子が因子分析法にて肺病変とは異なった方向性を示す臨床的パラメーターとなりうる事も認められてきた.10年度には,慢性長期暴露のin vitroモデルへの検討を加えるとともに,症例のサンプルでの選択的スプライシング異常に焦点を合わせていきたいと考えている.
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