マイクロインジェクション法を用いて膵組織血流に対するTRHの脳内の作用部位を検討した。Wistar系雄性ラットを用い実験前夜より絶食としウレタン麻酔下で開腹の上、水素ガスクリアランス式血流計の白金電極とレーザードップラー式血流計のプローブを膵臓の脾部表面に装着した。1時間の定状化の後、30分間の膵臓基礎血流を測定し、定位脳手術装置に固定の上、TRHの安定型アナログであるRX77368(0.11〜10ng)か生理食塩水(10nl)をマイクロマニュピレーターとガラス製マイクロシリンジを用いてラットの延髄迷走神経運動核に注入した。その後2時間の膵臓組織血流の変化を観察した。 その結果、 a)TRH(5ng)を左右どちらの延髄迷走神経運動核に注入しても投与後30分をピークとした有意な血流の増加が認められ、90分後に元の状態に復した(平均±SE;%:基礎血流100±0;15分110±7;30分148±12;45分143±11;60分128±10;75分112±14;90分104±5;105分103±7;120分106±5)。 b)上記のTRH延髄迷走神経運動核投与による膵組織血流増加作用はTRH0.3〜5ngの範囲で用量依存性であった(30分時の血流の変化:生理食塩水102±8;0.1ng 104±6;0.3ng115±8;0.5ng135±10;1ng 141±8;5ng 148±12;10ng 146±15)。 c)上記のTRH延髄迷走神経運動核投与による膵組織血流増加作用は左右各々の頸部迷走神経切断によって消失した。
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