研究概要 |
肝臓組織内における星細胞は長い細胞突起を伸ばし、肝類洞壁を取り囲み、また、棘突起と呼ばれる細い二次突起を伸ばして肝実質細胞と相互作用していることか示唆されている。しかし、ポリスチレン培養皿を用いた通常の培養条件下では、肝臓星細胞は、細胞突起のない線維芽細胞類似の形態を示す。本研究では、培養星細胞の形態は、ポリスチレン、間質型コラーゲンゲル、基底膜成分からなるマトリゲルなど培養基質により著しく変化することを示した。特に、l型およびlll型コラーゲンゲルを培養基質として培養した場合には、in vivo類似の長い突起の伸長が誘導され、この突起誘導は細胞表面のインテグリンと細胞外基質であるコラーゲン線維との結合に依存し、また、タンパク質チロシンリン酸化、あるいは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼなどのシグナル伝達系に依存した現象であることを明らかにした。さらに、この細胞突起誘導には、神経組織における樹状突起と同様に、細胞内骨格、特に、微小管構築が重要であることを示した。培養肝臓星細胞の細胞突起には、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1)が、また、レチニルアセテートを含む培養液中で培養後はビタミンAを含む脂質滴が認められ、星細胞の機能上重要であることが示唆された。実際に、l型コラーゲンゲル上で長期間培養後、星細胞の周囲および細胞突起に沿ってコラーゲンゲルの亀裂が見られ、MMP‐1分泌によることが示唆された。培養星細胞におけるMMP-1発現は、免疫蛍光染色およびRT‐PCR(PCRTherma1 Cycler MP,TAKARA,TP3100を用いて分析)によっても認められた。
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