1)ヒト腸管リンパ濾胞における細菌16S ribosomal RNA(rRNA)の検出 昨年度に引き続き、ヒト腸管リンパ濾胞における細菌16S ribosomal RNA(rRNA)の検出を、症例数を増加して検討した。また汚染による偽陽性を検討した。 その結果、(1)細菌16S rRNAはnon-IBDでは14例中2例(14%)に、クローン病では14例中4例(28%)に、潰瘍性大腸炎では5例中2例(40%)に検出された。(2)陽性の8例より19のrRNAが検出され、そのうち5個は、100%のhomologyを示し、staphylococcus species(3個)、Streptococcus sanguis(1個)、Paracoccus marcusii(1個)が同定された。残りの14個は100%以下で、データが登録されていないか未知の細菌であった。以上よりヒト腸管リンパ濾胞における細菌16S rRNAを始めて証明した。本研究は今後のリンパ濾胞微生物学の先駆けをなすものであり、今後、種々の病態との関連が明らかにされると思われる。リンパ濾胞内の細菌がクローン病、潰瘍性大腸炎の発症に関与するか否かは今後の検討を要する。 2)クローン病におけるStaphylococcus aureusの関与 クローン病でスーパー抗原の関与の可能性が指摘されている。スーパー抗原としてはS.aureusがもっとも代表的であり腸管よりS.aureusが検出されるか否かをS.aureusのcoagulase遺伝子を増幅するPCRで検討した。クローン病38例を検討したが、クローン病初期病変が出現するリンパ濾胞を含めて全例陰性であり、S.aureusの関与は一次的な発症にも、二次的な病像の修飾にも極めて少ないと結論した。
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