研究概要 |
1) 胃癌の原発巣、転移巣(癌性胸・腹水)にCostimulatory分子[B7-1(CD80),B7-2(CD86)]発現の程度をFACS解析を行った。その結果、B7-1,B7-2分子共に正常胃粘膜、癌の原発巣にはconstitutivelyに発現しているが、転移巣ではB7-2分子は良く発現しているが、B7-1分子はほとんど欠如している事が判明した。 この事実は癌の浸潤・増殖に対する低免疫応答性の一因となっていると想定された。 2) 消化器癌の原発巣、転移巣(癌性胸・腹水)にCD44splicing variants,v6,v9分子の発現に付き検討を加えた。その結果、CD44v6は胃癌などの腺癌には発現しておらず、食道癌などの扁平上皮癌に発現が認められた。同様に培養細胞株でも胃癌では発現しておらず、食道癌細胞株のみに発現していた。CD44v9分子は胃癌、食道癌共に発現しており、特に転移巣にてoverexpressionしていた。食道癌に発現が認められるCD44v6分子は放射線治療により有意に減少したが、CD44v9分子は変化せずその機能の面から注目される。 3) 消化器癌の原発巣、転移巣(癌性胸・腹水)において、アポトーシス関連分子であるFasR(CD95)およびFasL(CD95L)分子の発現につき癌細胞、及び浸潤リンパ球(TIL)上の発現を検討した。その結果、FasRは正常胃粘膜上皮、胃癌原発巣、転移巣の癌細胞上においてほとんどその発現を認められなかった。しかしながら、FasLは正常胃粘膜上皮、胃癌原発巣の癌細胞にconstitutivelyに発現しており、特に転移巣の癌細胞上には有意に高い陽性細胞比率が認められた。TILのFasRおよびFasL発現の検索では胃癌原発巣ではほとんど両分子とも発現が認められなかったが、転移巣(癌性胸・腹水)のTILではFasR,FasLともに49.5%,26.2%と高い陽性細胞比率を示した。さらにTunel法にてTILのアポトーシス細胞数を算定した。その結果、転移巣(癌性胸・腹水)のTILでは原発巣のそれに比べ4.6倍(11.2%陽性細胞比率)と高く、転移巣の癌細胞に強く発現されているFasL分子はTILをcounterattackしtumor immune evasionに有利に働いているものと考えられた。
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