研究概要 |
TGFαの作用発現過程において、TGFαがEGF-Rにbindした後その細胞内ドメインであるチロシンキナーゼがリン酸し一連の情報伝達系が作動するが、チロシンキナーゼの活性化に伴いras遺伝子発現蛋白であるras-p21とGTPとの結合型が上昇する。この活性型ras蛋白質はさらにセリン-スレオニンプロテインキナーゼであるmitogen activated protein(MAP)kinaseを活性化し遺伝子発現,細胞増殖をもたらすとされている.本来生体内で発現しているras蛋白は,癌細胞において活性化している変異型rasとは異なり生理的に上記の情報伝達系の一部をになっている.今回前半の研究過程ではまず TGFαトランスジェニックマウス(T)とproto型ras過剰発現トランスジェニックマウス(R)を一定数掛け合わせダブルトランスジェニックマウス(T+R)を作成した。それぞれT,R,T+Rとし、いずれのトランスジーンをも有さないコントロールマウス(C)とphenotypeを比較した。各群の識別はPCRで行った。 生後12か月から18か月のT+Rで巨大肝腫瘍を認め(2/5)、組織学的には肝細胞癌であった。Rでは皮膚及び尾部にpapillomaを認め(2/4)、Tでは肝腺腫を認めた(1/6)。Tの肝腺腫は癌化には至っていなかった。 PCNA染色で生後1年後の各群のマウスの肝臓を染色し比較した。T+Rでは癌部で10%以上、非癌部で約1%の陽性率であった。一方singleのTとRではPCNA染色は0〜0.1%と低値であった。これらの結果は個体数がいずれも10匹以内の少数例での検討であるため今後さらに数を増やして上記、情報伝達系の解析を行う。
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