研究概要 |
昨年度よりひき続き主に肝腫瘍の発生について、増殖因子と癌遺伝子の相互作用をin vivoで検証するために、すでに開発され、群馬大学で継代しているTransforming growth factor α(TGFα)トランスジェニックマウス(T)と実中研よい供与されたrasのトランスジェニックマウス(R)をかけ合わせ、phenotypeの変化を検討した.体重はT+RでT,Rに比し有意に低く、体重に対する肝重量比はT+Rで有意に高かった.生後12か月から18か月のT+Rで巨大肝腫瘍を認め(4/15),組織学的には肝細胞癌であった。Rでは皮膚及び尾部にpapillomaを認め(4/15)、Tでは肝腺腫を認めた(2/15)。Tの肝腺腫は癌化には至っていなかった。PCNA染色で生後1年後の各群のマウスの肝臓を染色し比較した。T十Rでは癌部で10%以上、非癌部で約1%の陽性率であった。一方singleのTとRではPCNA染色は0〜0.1%と低値であった。2/3肝切除後の肝再生は、T+Rで有意に促進されていた.さらに一定年齢を越えるまで待機中のマウスもいる現在までの段階では、TGFαとrasは、肝発癌については弱い協調作用を有し、肝再生に関しては、明らかな協調性を有していた.その他の皮膚腫瘍、膵臓線維化などの単独のトランスジェニックのphenotypeは相互に増強作用を示さなかった. 以上、TGFαとrasの同時過剰発現はマウス自体の発育を阻害し、必ずしも全身臓器の増殖は促進しないが、肝腫瘍発現に関しては弱い相乗作用を、また肝再生に関しては協調作用を有していることが判明した.
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