研究概要 |
本研究はC型肝炎ウイルス(HCV)蛋白と相互作用するヒト蛋白を固定し,その機能.特に宿主に及ぼす影響を明らかにしようとするものである.まずtwo hybrid systemを行う目的でNS5Aの一部を,酵母内でGAL4 DNABDとの融合蛋白を発現するplasmidにcloningし検討したところ.NS5A蛋白の一部が転写活性化因子として機能することが示された.そこでNS5Aのdeletion mutantを用いて,哺乳細胞内でその転写活性化能につき検討した.全長NS5A蛋白には転写活性化能はなかったが,N端を欠失したNS5A蛋白が転写活性化因子として機能することを見出し.またその転写活性化domainとして酸性領域2ヵ所,プロリンに富んだ領域1ヵ所を認めた.また.NS5A蛋白とヒトの基本転写因子群との相互作用につき免疫沈降法にて検討し,NS5AがTFIIDの構成成分であるTATA binding protein(TBP)およびTBP associated factor(TAF)の一部,TAF_<II>70,TAF_<II>32.TAF_<II>28,TAF_<II>20,TAF_<II>18と結合することを認めた.また,7種のHCV蛋白,Core,NS2.NS3.NS4A,NS4B,NS5A,NS5Bをmammalian expression vectorにcloningし,HeLa細胞を用いてHCV蛋白が惹起する細胞内シグナル伝達pathwayにつき検討した.その結果,Core蛋白がNF-κB pathway,MAPKカスケード,JNKカスケードを,NS4B蛋白がNF-κB pathwayを活性化することを見出した.また,HCV蛋白が癌抑制遺伝子p53機能に及ぼす影響の検討を行い.Core蛋白がp53と結合することにより,p53の機能を増強していることを明らかにした.
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