研究概要 |
我々は本年度の研究課題としてα1-6フコース転移酵素に対するアンチセンスを用いた肝細胞癌の治療に関する基礎的検討を行った. 1.α1-6フコース転移酵素に対するアンチセンスmRNAの安定発現細胞系列の樹立に関して,すでにUozumi N.ら(J.Biol.Chem.271(44):27810-7,1996)によって報告されている配列を基に,α-6フコース転移酵素のmRNA全長をHepG2より調製したcDNAを用いてクローニングした.さらにcDNAの5′側約600塩基をテトラサイクリンの有無でmRNAの発現制御が可能な系に,アンチセンスならびにセンス方向にクローニングした.現在これらのベクターをエレクトロポレーション法で各種細胞系列にトランスフェクトし,センスならびにアンチセンスmRNAの安定発現株を樹立中である. 2.アンチセンスmRNAでα1-6フコース転移酵素の発現が抑制されていることを確認するため以下の系を用いトランスフェクト肝癌細胞系の酵素活性を測定中である.比較対照としてIII型N-アセチルグルコサミン転移酵素(GnT-III)活性も同時に測定する.α-1-6FT,GnT-III活性は蛍光標識したアシアロ・アガラクト2分岐型糖受容体に対し,糖供与体としてGDP-Fuc,UDP-GlcNAcを,また酵素源として培養組織抽出液を用いて反応後逆相系HPLCにて分離・定量する.今後,2の系で確認されたセンスならびアンチセンスmRNAの安定発現株を用いて,α1-6フコース転移酵素の癌細胞の浸潤性,転移能などへの関与に関し検討していく予定である.
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