カテプシンEは酸性プロテアーゼの一つで、1)細胞内プロテアーゼである、2)カテプシンDと違い非リソゾームプロテアーゼである、3)胃粘膜皮蓋上皮細胞に最も多く存在する、4)胃以外に脾臓、胸腺、など免疫系組織に存在する、という特徴を持つ。カテプシンEの生理機能は、細胞内プロテアーゼで、胃以外に免疫系組織に主に存在することから、免疫機構、特に抗原形成に関与していると考えられているが、いまだ不明である。我々はカテプシンEの病態との関連において、免疫組織化学的解析で、カテプシンEが膵管細胞癌の100%(15例)に発現していることを認めた。正常膵では免疫組織化学的、酵素学的にも検出されず、膵でのカテプシンEの発現は癌特異的であった。膵癌細胞株においても75%と高率にカテプシンEの発現が認められ、膵癌細胞株由来のカテプシンEは、分子量が84kDaと正常(82kDa)に比べ大きく、培地中にも多量に認められた。このことは、本来細胞内プロテアーゼであるカテプシンEが、膵癌では糖鎖の異常を来すなど高分子を形成し、細胞内分布が変り、細胞外に放出されると考えられる。膵癌で細胞外に放出されるカテプシンEは、癌浸潤などの病態に関与することが考えられる。本研究で、カテプシンEのenzyme immunosorbent assay(ELISA)を確立し、膵癌患者の膵液中のカテプシンEを測定し、膵癌診断のマーカーとしての有用性を膵癌29例、慢性膵炎82例で検討した。膵液中のCA19-9やCEAは慢性膵炎と膵癌とでは有意差が認められず、膵液中のカテプシンE(63%)と細胞診(69%)が膵癌診断に有効であった。
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