研究概要 |
ヒトアシアロ糖蛋白受容体(AGPR)をコードするcDNA-断片を組み替え蛋白発現ベクタープラスミドにサブクローニングし,大腸菌を用いてヒトAGPR組み替え蛋白を発現させた。AGPRには2種類のサブクラスが存在するが,今回発現させたものはAGPR-H1であり,292アミノ酸からなる全長蛋白と42アミノ酸からなる細胞内領域および233アミノ酸からなる細胞外領域を含む3種類の組み替え蛋白を作製した。精製した蛋白を固相化抗原として用い,酵素抗体法により自己免疫性肝炎患者血清との反応性を検討した。酵素抗体法による検討では,AGPR全長蛋白と細胞外領域を含む蛋白に対して多数例で反応性が認められ,細胞内領域を含む組み替え蛋白に対する反応性は弱かった。酵素抗体法による成績から自己免疫性肝炎患者血清中の抗体エピトープは,ヒトAGPR細胞外領域に存在することが推測された。ウエスタンブロット解析ではヒトAGPR全長蛋白に対する反応性は全く認められず,SDS電気泳動等による抗原エピトープの失活に伴う変化が疑われた。次に,液相での免疫沈降法による抗原抗体反応を検討するため,試験管内でのAGPR蛋白合成を試みた。ヒトAGPR cDNAをテンプレートとしてmRNAを合成し,ウサギ網状赤血球溶解液を用いて蛋白合成を行った。試験管内での蛋白合成はコントロールmRNAとして用いたBrome Mosaic Virusでは良好な蛋白発現を認めたが,AGPR蛋白の発現は認められなかった。試験管内でのAGPR蛋白発現が行われなかった理由は不明であるが,AGPRが肝細胞にほぼ特異的に発現する蛋白であることと関連があるのかもしれない。今後,大腸菌組み替え蛋白をビオチン等で標識して液相中での抗原抗体反応を解析して,酵素抗体法から推測されるエピトープをさらに検討する予定である。
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