ATX-S10とフォトフリンII(Ph-II)によるPDTの作用機序の差異について_<31>P核磁気共鳴スペクトル(_<31>P MRS)と病理像を用いて検討した。 BALB/cに移植HeLa腫瘍を作成しATX-S10とPh-IIによりPDTを行い、経時的に_<31>P MRSおよび病理組織像について検討し、その両者を比較することにより、光感受性物質の相違による抗腫瘍効果の差異を検討した。PDT後28日までの観察により完全に腫瘍が消失したCR群と7日から10日目ごろ肉眼的に一旦腫瘍が消失した後、再び大きくなる再発群は7日目まで差がなくhigh effect群とし、期間中一度も腫瘍の消えないPR群をlow effect群とした。 ATX-S10によるPDTでは1日目のMRSにおける総リン量と残存ATR量の比により両群の区別が可能であった。Ph-IIのPDTでは7日目までリン総量の減少度が大きい程効果が大であったが、1日目のMRSパターンは両群ともATPが残存しており差がなかった。病理所見からは生きている細胞の多少はMRSのATPの多少で示された。ATX-S10によるPDTではhigh effectの場合1日目に細胞はほとんど死滅しておりMRSはhypoxic patternをとった。Ph-IIのPDTではほとんどの細胞が死滅している場合と残っている場合があり、いずれもMRSでATPが残っていた。このことから、Ph-IIは、ATX-S10が血流遮断効果により腫瘍全体が障害されるのと異なり、細胞レベルで障害され、その程度によってPDTの効果が異なることがわかった。 以上よりPDT治療後28日目に判定した治療効果を治療後7日目までのMRSで予測できることが病理により裏付けられた。2種類の光感受性物質によるMRSパターンの違いは、作用機序の違いによる腫瘍の障害状態の相違を示している。
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