研究課題/領域番号 |
09670535
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
有沢 冨康 名古屋大学, 医学部, 助手 (50273230)
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研究分担者 |
丹羽 康正 名古屋大学, 医学部, 助手 (20283442)
後藤 秀実 名古屋大学, 医学部, 助手 (10215501)
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キーワード | Helicobacter Pylori / Tumor Necrosis Facter / soluble TNF Receptor / Apoptosis |
研究概要 |
総合健診受診者で上部消化管内視鏡検査をうけた者より無作為に抽出し、同意を得た上で前庭部より生検を行った。組織学的検査、Helicobacter pylori (HP)感染の確認、および培養液中で培養し、上清中に放出されたTumor necrosis factor (TNF)、及びその可溶性受容体であるsoluble TNF receptor I(sTNFRI)、II(sTNFII)の量をELISA法で測定した。HP感染率は85%であり、HP感染によりTNF、sTNFRI、IIともその放出量は増加した。TNF放出量はsTNFRI、IIの放出量に相関し、一方TNF放出量は組織の単核球浸潤と相関を認めたものの、sTNFRsの放出量は組織学的に相関する指標は認めなかった。以上の結果より、TNFは主として炎症細胞から放出され、sTNFRの放出の主座はそれと異なることが推測された。 そこで、胃癌培養細胞株MKN45を用い検討したところ、培養上清中のTNFの濃度に依存してsTNFRI、IIの放出が確認できた。また、MKN45細胞においてはTNFはFACSおよびDNA ladderにおける検出においてもapoptosisの誘導はほとんど検出されず、TNF100ng/mlの高濃度の作用においてようやくわずかな細胞増殖能の抑制が観察されたのみであった。そこで、sTNFRI、II各々に対する中和抗体存在下でTNFを作用させたところ、それぞれ単独の作用では有意な変化は認められなかったが、両中和抗体を同時に作用させることで、DNA ladderの増強と細胞増殖の有意な抑制が観察された。さらに、Weatern blottingでは、MKN45細胞膜表面のTNFRI、IIの発現量は減少しており、RT-PCRによる検討では、mRNA量は不変ないしはやや増加傾向を認めた。以上の結果より、MKN45細胞においては、TNFに対し膜表面のTNF受容体を可溶化する一方で、可溶化受容体はTNFそのものの中和作用を示すといった一種のdown regulationの機構の存在が推定された。
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