研究概要 |
MRイメージング法は各種疾患の診断ならびに病態の把握に極めて有効な手段である。MRと撮像法の進歩により、消化管など動きのある臓器の構造と機能を非侵襲的に計測することが可能になってきている。しかし、MRによる消化管運動機能の解析法は完成されてはおらず(1)速い運動の記録(食道運動)、(2)長時間記録(胃運動)、(3)連続3次元構築(胃排出機能)および(4)水の移動(膵炎)の観察には技術的に解決せねばならぬ点が多い。本年度は、消化管の速い運動の代表として食道運動(伝播速度10cm/sec)の記録の記録に重点をおき研究を進めた。測定には家兎を用い、本研究用に作成した固定器に固定し、食道内に挿入したバルーンカテーテルの動きを内径250mmの能動遮蔽型勾配地場コイルを用い、MR装置(Biospec47/40,Bruker)により測定した。撮像は矢状面で、field of view 22.5cm,matrix96x96,TR3.4ms,TE1.9msの条件でSnapshot法により秒速3枚の速度で約20秒間、行った。家兎の全食道が鮮明に抽出され、8.3cm/sの速度で蠕動波により移動する直系3cmのバルーンを捉えることが可能であった。更に、嚥下に伴う蠕動運動そのものも捉えることに成功した。内圧測定用カテーテルを用いた、食道内圧と蠕動運動のMRイメージの同時記録を行い、MRにより捉えられた食道の蠕動波と内圧の変化が一致することが確認できた。今回の計測で得られた消化管運動の記録速度は、現時点では世界で最高速である。
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