研究概要 |
本研究では、炎症性腸疾患(IBD)の粘膜局所への好中球浸潤の機序を明らかにするために、まず内視鏡下生検材料の組織培養を行い、好中球に対して遊走活性を有するαーchemokineの代表であるinterleukin8(IL-8)の培養上清中の活性を調べた。IL-8活性(ng/mg protein)は,健常群(median 51.9, range 35.3-107.9)に比べ、活動期IBD患者で有意に高値を示した(潰瘍性大腸炎:median227.4, range92.1-520.3,クローン病:median 125.2, range52.4-352.4)。免疫染色およびin situ hybridization法を用いてIL-8の発現を検討したところ、CD68陽性であるマクロファージ、myeloperoxidase陽性である好中球などの浸潤細胞とnon immune cellである上皮細胞および線維芽細胞にもその発現を認めた。この結果をもとに腸管粘膜組織の培養上清が有する遊走活性をBoyden-chamber変法を用いて検討したところ、そのIL-8活性とほぼ平行して活動期IBD患者由来の培養上清で高い遊走活性を示し、その活性は抗IL-8抗体で培養上清を処理することにより中和された。次いで腸管粘膜組織由来の線維芽細胞から細胞外基質extracellular matrix(ECM)を抽出し、粘膜組織の培養上清が誘導する好中球のECM接着能をadhesion assayにより測定した結果、やはりそのIL-8活性に平行して、活動期IBD患者由来の培養上清で高い接着能を示した。以上の結果より、病変部粘膜にmigrateした好中球が自らIL-8などのchemokineを産生し、ECMとの相互作用を介してさらに好中球の蓄積をきたすことが推測された。
|