本研究ではまずC型肝炎ウイルス(HCV)の構造蛋白のcDNAをマウス肝内あるいは筋肉内にelectroporation法を用いて導入発現しそれぞれに対する免疫応答を検討した。肝細胞内では16週後にもHCV構造蛋白の発現が認められ、特異的抗体や細胞障害性T細胞(CTL)活性が認められたが明らかな肝炎像は認められなかった。筋肉内接種ではin vitroでstableなHCVcore蛋白の発現が報告されているelongation facter 1 a geneのpromoterを用いて免疫した場合には単回免疫で充分な特異的CTLが誘導されたが、CMVのpromoterを用いたベクターでは特異的CTLは誘導されなかった。従ってHCVに対する充分な免疫応答を誘導するためには長期間安定した抗原発現が必要と考えられた。そこで筋肉内接種した後に肝内にHCV遺伝子を導入したところ炎症細胞浸潤を伴う肝細胞障害が認められた。さらに、HCVに対する特異的細胞性免疫応答を効果的に誘導するためにcore蛋白に対する抗原cpitopeを用いて特異的CTLの誘導をおこなった。その結果core蛋白のCTL-epitope単独の免疫では特異的CTLは誘導されないが、HCVのhelper T細胞に対する抗原であるhelper-epitopeを結合したキメラペプチドで免疫することで特異的CTLを誘導できた。またheper-epitopeで前もって免疫した後、HCVのcore領域のrecombinait vacciniavirusを投与したところ速やかに高いCTL活性が得られた。これらのことはHCVのhelper-epitopeによって活性化されたhelper T細胞がCTLの誘導に重要であるとともに、helper-epitopeによる免疫がHCVの感染に対する素早い免疫応答を誘導できることを示唆するものである。現在われわれは、co-stimulatory molecule等を用いたより効果的なCTLの誘導や、HCV抗原epitopeを組み込んだBCG接種によるHCV特異的CTLの誘導にも成功しており、今後CTL誘導型ワクチンの有用性を検討することが重要な研究課題であると考えられた。
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