研究概要 |
平成9年度に明らかにしてきた腸管上皮細胞における補体制御蛋白DAFの発現がIL-4やTNF-αにより誘導される知見を、潰瘍性大腸炎の患者の病変粘膜において検討した。即ち、炎症の惹起された病変粘膜ではDAFの発現が亢進しているであろうことが予測されたため、患者さんの同意のもと大腸内視鏡下にえられた生検組織をもちいて、DAF mRNAの発現とDAF蛋白の発現について検討した。生検材料よりtotal RNAを抽出し、RT-PCR法によりDAF mRNAの発現を正常粘膜と病変粘膜で比較したところ、明らかに病変粘膜でDAF mRNAの発現亢進が認められた。また、免疫組織化学的検討でも,病変粘膜におけるDAF蛋白の発現の亢進が確認された。即ち、正常粘膜では、DAF蛋白発現は非常に弱く殆ど認められなかったが、潰瘍性大腸炎の病変粘膜ではDAF蛋白発現が管腔側で著明に亢進していた。さらに、ジオキシゲニンで標識したcRNA probeを用いたin situ hybridization法による検討では、DAF mRNAの発現は大腸粘膜の陰窩上1/3の上皮細胞に特に強い傾向が確認された。これらの知見は、潰瘍性大腸炎の病因にDAFの発現誘導機構の異常が関与していることを示した初の知見であり、さらに我々のin vitroで得られた知見であるIL-4やTNF-αに関する検討を加えることにより、今後、潰瘍性大腸炎の病因および病態の一端が明らかにされるものと考える。
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