細菌性スーパー抗原であるstaphylococcal enterotoxin B(SEB)経口投与の実験的自己免疫性疾患の発症抑制・治療効果の機序を明らかにする目的で、既に有効性を報告しているコラーゲン誘導実験的関節炎(CIA)にSEB(1μg/マウス/日)を経口投与し、パイエル板および脾臓に発現されるサイトカインを検討した。コラーゲンブースター投与1週前よりSEBを経口投与し、ブースター直後、1、2週後にパイエル板および脾T細胞を分離し、APC共存下SEB・コラーゲン添加培養15、39時間後にTCR-Vβ8T細胞をFACSにて単離し、RT-PCRにてIL2、IL4、IL5、IL6、IL10、INF_γ.TGF_βの発現を解析した。その結果、脾T細胞はSEB投与1週後で既にTGF_β発現が誘導され、L2、INF_γ発現時相の遅延、IL4発現時相の短縮がみられた。すなわち、SEB経口投与のaAに対する発症抑制・治療効果は、抑制性サイトカイン産生TCR-V_β8T細胞の誘導とTh1からTh2へのimmune deviationが関与すると考えられた。(日本リンパ学会にて報告) 一方、DSS誘導実験的大腸炎発症に対するSEB経口投与はDSS大腸炎の病変大腸長、内視鏡重症度、病理組織学的スコアの軽減効果を認めたが、発症抑制は得られなかった。SEB経口投与で誘導される脾T細胞のアナジーがDSS長期投与で解除されることが要因と考えられた。このことから、大腸炎自然発症TcRα^<-/->C57BL/6マウスを用いSEB(0.2μg/ml)長期自由飲水投与による検討を行った。結果は継続解析中であるが、同マウスにDSSを1週間投与した際の投与5週後の生存率はSEB投与により6/8匹から3/8匹に減少し、生存群の組織学的スコアは有意に軽微で、IBDへの臨床応用の可能性が示唆された。
|