我々は、今までにSEBの経口投与によりDSS大腸炎の発症が抑制され、その機序としてVβ8に規定されたclonal deletionの関与を明らかにしてきた。TCR α鎖欠損マウスにおけるSEB経口投与の効果について検討した。(実験1)TCRα鎖欠損マウスに2%DSSを1週間投与し大腸炎を作成したマウスで、さらにSEBを経口投与した群では大腸粘膜傷害が軽度であり、生存率も改善していた。血清IgMは、DSS大腸炎群では増加していたが、SEB投与により減少する傾向がみられた。また、SEB投与群と非投与群ではCD4^+TCRVβ^<dim>T細胞およびCD4^+TCRVβ8^+T細胞分画に差はみられなかった。(実験2)SEBを9週間飲水させた群とさせない群で自然発症大腸炎について検討したが、SEB経口投与群においても炎症抑制効果は得られず、CD4^+TCRVβ^<dim>T細胞分画にも変化を認めなかった。TCRα鎖欠損マウスに自然発症する大腸炎モデルでは、CD4^+TCRVβ^<dim>T細胞がその発症機序に関与していると言われている。大腸炎自然発症前のTCRα鎖欠損マウスに、細菌性スーパー抗原であるSEBを経口投与することでDSS誘発実験的大腸炎に発症抑制効果が得られた。したがって、TCRα鎖欠損マウスにおけるDSS誘発大腸炎の発症はSEB応答性Vβ領域を有するCD4陽性TCRα^-β^+細胞の関与が示唆される。しかし、TCRα鎖欠損マウスの自然発症大腸炎モデルでは、SEBで大腸炎は抑制されず、局所の炎症が成立し持続している状況下では、SEBによりT細胞の不応性を誘導することは困難であると考えられた。
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