細胞接着に関するチロシンホスファターゼとその消化器癌における変異に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670549
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 的崎 尚 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (80252782)
• 研究分担者: 青山 伸郎 神戸大学, 医学部附属病院, 助教授 (30243299)
• キーワード: チロシンホスファターゼ / PTPH1 / 消化器癌 / 細胞接着

研究概要

研究代表者は、ヒト胃癌細胞KATO-III細胞に発現するPTPaseを探究した結果、PTPH1と呼ばれるPTPaseの発現を認め、最近、その遺伝子クローニングに成功した。PTPH1は、そのN端側にEzrin様ドメインを有する細胞質型のPTPaseであり、Ezrin様ドメインが細胞間接着装置に存在することから、PTPaseであるPTPH1が細胞接着装置に存在し、蛋白質チロシンリン酸化を制御し、細胞接着機能の制御に密接に関わっている可能性を示唆している。そこで、本研究では、昨年度に引き続き、PTPH1の生理機能、および細胞癌化における役割を明らかにしようと試みた。その結果、(1)PTPase活性を喪失させた変異型PTP H1cDNA.Ezrinドメインを欠損させた変異型PTPH1cDNA、および野性型PTPH1cDNAを培養細胞にトランスフェクションし、各細胞株を樹立した。これらの細胞の細胞外基質への接着や細胞間接着への影響を検討したが、現在までのところ有意な変化を見い出せてはいない。(2)大腸癌、膵癌、胃癌細胞株より、RNAを抽出し、RT-PCR法により、PTPH1遺伝子を直接シークエンス法にて解析をし、いくつかの点変異を見い出している。(3)PTPH1遺伝子欠損マウスを作成中であるが、現在までのところ、有望なES細胞のクローンは得られていない。

研究成果

• [文献書誌] Takada,T.: "Roles of the complex formation of SHPS-1 with SHP-2 in insulin-stimulated MAP kinase activation." J.Biol.Chem.273・15. 9234-9242 (1998)
• [文献書誌] Tsuda,M.: "Inteqrin-mediated tyrosine phosphorylation of SHPS-1 and its association with SHP-2 : Roles of FAK and SRC family kinases." J.Biol.Chem.273・21. 13223-13229 (1998)
• [文献書誌] Takeda,H.: "Lysophosphatidic acid-induced association of SHP-2 with SHPS-1 : Roles of RHO, FAK, and a SRC family kinase." Oncogene. 16・23. 3019-3028 (1998)
• [文献書誌] Ogawa,W.: "Role of binding proteins to IRS-1 in insulin signalling." Mol.Cell.Biochem.182・1-2. 13-22 (1998)
• [文献書誌] Kuroda,N.: "Differential expression of SHP2, a protein-tyrosine Phosphatase with SRC homology-2 domins, in various types of renal tumor." Virchows Arch.433・4. 331-339 (1998)
• [文献書誌] Takeda,H.: "PI 3-kinase γ and protein kinase C-ζ mediate RAS-independent activation of MAP kinase by a Gi protein-coupled receptor." EMBO J.18・2. 386-395 (1999)