研究代表者は、ヒト胃癌細胞KATO-III細胞に発現するPTPaseを探究した結果、PTPH1と呼ばれるPTPaseの発現を認め、最近、その遺伝子クローニングに成功した。PTPH1は、そのN端側にEZrin様ドメインを有する細胞質型のPTPaseであり、Ezrin様ドメインが細胞間接着装置に存在することから、PTPaseであるPTPH1が細胞接着装置に存在し、蛋白質チロシンリン酸化を制御し、細胞接着機能の制御に密接に関わっている可能性を示唆している。そこで、本研究では、PTPH1の生理機能、および細胞癌化における役割を明らかにしようと試みた。その結果、(1)PTPH1は、細胞接着部位に局在することが明らかとなった。(2)PTPase活性を喪失させた変異型PTPH1cDNA、Ezrinドメインを欠損させた変異型PTPH1cDNA、および野性型PTPH1cDNAを培養細胞にトランスフェクションし、これらの細胞外基質への接着や細胞間接着への影響を検討している。今後、PTPH1の抗体を用いたマイクロインジェクション等を行う予定である。(3)大腸癌、膵癌、胃癌細胞株より、RNAを抽出し、RT-PCR法により、PTPH1遺伝子を直接シークエンス法にて解析し、いくつかの変異を見い出している。これらが、がん化に関連するか否かを今後検討する予定である。(4)PTPH1遺伝子欠損マウスの作成を引き続き行う予定である。また、今後、PTPH1のEzrin様ドメインやPDZドメインに結合する分子を酵母Two-Hybrid法などを用いて、探索する予定である。
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