慢性肝疾患で血清および肝組織中の細胞マトリックス分解酵素MMP-3とMMP-9を検討し下記の成績を得た。 1.血清MMP-3濃度は女性に比べて男性で約2倍高い値を示したが、性別に関係なく、慢性肝炎および肝硬変で著明に減少した。なお、血清MMP-3は病型間では有意な差はなく、肝の壊死炎症、線維化の程度との関連も認められなかった。肝細胞中のMMP-3濃度は非硬変肝と硬変肝で変わらなかった。血清MMP-3は臨床的には有用性は少ないが、肝線維化病態を考える上で興味ある成績と思われる。なお血清のカラムクロマトでは分子量60kDaに大きなピークと25kDaに小さなピークを認め、分子量より前者がproMMP-3、後者が活性型MMP-3であった。 2.血漿MMP-9濃度は、慢性肝炎では増加しなかったが、肝硬変および肝硬変合併肝細胞癌で著明な上昇を認めた。肝細胞中のMMP-9濃度は非硬変肝に比べて硬変肝で著明に増加し、更にカラムクロマトでは血漿および肝組織とも分子量95kDaに一峰性のピークとして抽出され、血漿MMP-9が肝組織中での変動を反映していることが示された。臨床的には血漿MMP-9は慢性肝炎と肝硬変との識別に有用であることがROC解析で示された。なお、肝硬変合併肝癌での血漿MMP-9は肝硬変と差がなく、更に肝癌の治療前後で差を認めなかったことより、肝癌での上昇は基礎肝病変の肝硬変に由来するものと思われた。
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