研究概要 |
潰瘍性大腸炎は、原因不明の大腸の炎症性疾患であるが、潰瘍性大腸炎の治療方針の決定や、治療法の効果判定には腸炎の病勢判定は不可欠である。我々は潰瘍性大腸炎の病変局所にみられる免疫応答について補体の面から検討してきた(Clin Exp Immunol(1996)104,286-292.)(Lab Invest(1995)72,587-591.)。その中で、膜性補体制御因子の一つであるDecay Accelerating factor;DAFが、病変大腸粘膜上皮で、炎症の程度を反映して発現が増強することを明らかにした。同様にDAFの発現亢進が観察される大腸癌の患者便中には、DAFが検出されるため(Gastroenterology (1995)109,826-831.)、潰瘍性大腸炎患者の便中には、大腸炎の程度に応じて放出されたDAFが検出される可能性が考えられる。そこで、潰瘍性大腸炎患者、他の炎症性疾患患者、下痢患者、健常対照者などの便中DAF濃度の測定したところ、活動期潰瘍性大腸炎患者の便中DAF値は、非活動期患者や健常対照者などに比べ有意に高値を示し、治療により病勢が沈静化すると低下した。また、便中DAF値は、内視鏡的、組織学的活動度と相関した。以上から、潰瘍性大腸炎患者便中のDAF濃度測定が、非侵襲的かつ簡便な潰瘍性大腸炎の活動性の新しいマーカーとなりうるものと考えられた(Clin Exp Immunol(1998)in press)。現在、培養大腸上皮細胞を用い、種々のサイトカインのDAF発現と放出におよぼす影響について検討中である。
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