自己免疫性肝炎は抗核抗体陽性、血清IgG値の高値を特徴とする慢性活動性肝炎であり、その病態には免疫抑制機能の低下による免疫系の亢進が関与しているものと推測されているが、その免疫抑制機能の異常については解明されていない。本研究では、自己免疫性肝炎にみられる免疫抑制機能の異常を、免疫抑制性サイトカインであるTGF-βおよびTGF-βレセプター(T β R)のリンパ球における発現および機能より解析し、自己免疫性肝炎の病態を解析するものである。まず、自己免疫性肝炎患者末梢血リンパ球におけるTGF-β、TβRの発現について検討した。自己免疫性肝炎患者リンパ球にTGF-βならびにTβRtypeI、TβRtypeIIの発現を認めた。自己免疫性肝炎患者リンパ球と健常者リンパ球でTβRtypeIIの若干の発現の相違を認め、これらの発現量を定量的に検討するために、現在protection assayにて検討中である。一方、TGF-βは、LPSあるいはIL-12刺激末梢血リンパ球におけるTNF-α、IFN-γ産生を濃度依存性に抑制した。また、固相化抗CD3抗体刺激CD4^+T細胞(マイトマイシン処置)とB細胞の共培養系における免疫グロブリン(IgG)産生もTGF-βによって抑制された。これらの結果より、TGF-βはT細胞あるいはB細胞に対して免疫抑制的に作用し、さらに自己免疫性肝炎患者リンパ球にTβRtypeIIの発現の相違がみられることから、TGF-βによる免疫抑制機能の低下が自己免疫性肝炎の病態に関連する可能性が推測された。
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