研究概要 |
1.種々のAFP転写調節領域を持つレトロウィルスベクターの作製:2種の目的遺伝子(HSV-Tk遺伝子、β-gal遺伝子)の上流に、その調節領域として以下の3種のAFP遺伝子転写制御領域を接続し、計6種の組換えレトロウイルスベクターを作成した。(1)0.3kbのヒトAFP遺伝子プロモーター(LNAF0.3TK,LNAF0.3GAL)、(2)ヒトAFPエンハンサーBをAFPプロモーターの上流に接続(LNAFE0.3TK,LNAFE0.3GAL)、(3)遺伝性高AFP血症で発見されたAFP転写開始点より塩基上流のGをAに置換した変異型ヒトAFPプロモーター(LNAFM0.3TK,LNAFM0.3GAL)。 2.in vitroにおける検討:HSV-Tk遺伝子を持つ組換えレトロウイルス3種をヒト肝癌細胞株HuH7,HepG2,PLC/PRF/5,huHl/cl.2と非肝癌細胞株HeLaに感染させ、GCVによる殺傷効果をMTT法により比較検討した。LNAF0.3TK感染では肝癌細胞特異的かつAFP産生量に応じた殺傷効果が得られ、ステロイド併用で殺傷効果が増強された。LNAFE0.3TK,LNAFM0.3TK感染ではいずれの肝癌細胞においてもLNAF0.3TKに比べて強い抗腫瘍効果が認められた。非肝癌のHelaはいずれのウイルスベクターを用いてもGCVによる抗腫瘍効果はみられなかった。 3.in vivoにおける検討:(1)LNAF0.3TK感染HuH7細胞をヌードマウス皮下に移植し、GCVによる抗腫瘍効果を検討したところ、腫瘍増殖はGCV治療により著明に抑制された。治療群の血中AFPレベルも対照群に比し明らかに低値であった。(2)LNAF0.3TKおよびLNAFE0.3TK感染PLC/PRF/5細胞をヌードマウス皮下に移植し、同様に抗腫瘍効果を比較検討した。LNAFE0.3TK感染細胞移植腫瘍に対するGCV治療はLNAF0.3TK感染移植腫瘍に比べて強い抗腫瘍効果を示した。
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