[目的]我々はこれまでヒト潰瘍性大腸炎患者において、type2 helper T細胞(Th2)優位の免疫異常が存在し、本症の発症ないし病勢と密接に関わることを報告してきた。本実験では、HLA-DPw9トランスジェニックマウスにTh2優位の免疫異常をもたらすことで、潰瘍性大腸炎を作成できるか否かを検討した。 [方法]Th2優位の免疫異常は、Th1特異的阻害剤TAK603(武田薬品より供与)を飼料に添加投与することで作成した。8ヶ月間、経時的に体重測定、および症状を観察した。 8ヶ月後マウスを屠殺し、組織学的に大腸を検索した。同時に大腸粘膜上皮細胞上のHLA-DPw9分子の発現をFACSで解析した。 [成績]8ヶ月の観察期間ではDPw9トランスジェニックマウスおよび対照群(HLA-DQ6トランスジェニックマウス)ともに体重減少、下痢、粘血便などの症状を認めなかった。 組織学的にも実験群、対照群ともに有意な炎症所見を認めなかった。 FACS解析の結果、大腸粘膜上皮細胞上にHLA-DPw9分子の発現を認めなかったことから、現在TNBSやDextran Sulfate Sodiumを投与し、大腸炎を惹起させ、HLA-DPw9の発現を確認し、現在その後の大腸炎の進展を観察中である。
|