研究概要 |
[目的]我々は、これまでヒト潰瘍性大腸炎患者にてHLA-DPw9上に自己抗原であるトロポミオシンが会合し、本症の病因となりうることを報告してきた。本研究ではHLA-DPw9トランスジェニックマウスを用いて潰瘍性大腸炎を作成しうるか否かを検討した。 [方法]潰瘍性大腸炎ではTh2優位の免疫異常があることを我々が見いだしており、Th1特異的阻害剤TAK603をHLA-DPw9トランスジェニックマウスに経口摂取させ、Th2優位の状態を作成した。一方、報告されている実験腸炎マウス(TCR α knockout mouse)において、腸内細菌の重要性が示唆されていることより、Specific pathogen free施設より、通常環境の元で飼育継続して、実験腸炎の作成を図った。 [成績]通常環境下にてTAK603を投与したHLA-DPw9トランスジェニックマウス及び対照群(HLA-DQ6トランスジェニックマウス)のいずれにおいても血便、下痢は発来しなかった。組織学的にも炎症所見をみとめず、通常環境下にてもSPFにて飼育した際と同様に実験腸炎は起こらなかった。また、大腸粘膜上にHLA-DPw9の発現を認めなかった。HLA-DPw9を大腸粘膜上に発現させるために、非特異的な炎症惹起剤を使用し現在検討中である。 潰瘍性大腸炎患者はHLA-DPw9に会合するトロポミオシンペプチドに対する自己抗体を有すること,HLA-DPw9(DPB1 0901)の集積性が高いという成績を得ており病因との関連を引き続き検討している。
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