研究概要 |
以前我々は、肝臓を直接支配している迷走神経を切断すると肝再生自体は阻害されないが、その再生速度が遅延することを示した(Am.J.Physiol.1987;253G:439)。さらに、これまでDNA量の定量DNA合成の変化率の測定を行うことにより、交感神経の中枢である視床下部腹内側核を破壊すると、迷走神経の過興奮が起き、肝切除後の肝再生が促進されること(Pflugers.Archiv.1994;428:26)、直接的に障害を与えることがなくても肝臓で細胞増殖が起きることを示してきた(Neurosci.Lett.1991;126:127,Am.J.Physiol.1992;262:G483,Gastroenterology 1993104:475,Life Sci.1995;57:827,Gastroenterology 1996;110:885)。平成9年度の科学研究費により、免疫染色的手技により、視床下部腹内側核の破壊による迷走神経の過興奮が起こる1日目から7日目までにかけて肝臓のacinar zone1(門脈域)からacinar zone3(中心静脈領域)へ増殖体が移行していくいくこと、および肝臓全体では3日目に細胞増殖のピークがあることを示した(J.Gastroenterol in press)。また、細胞増殖が起きているときには、増殖を制御するため、アポトーシスが起きていることが知られている。視床下部腹内側核破壊による自律神経の過興奮がアポトーシスを起こすのかということのついては、前記補助金により現在、特殊免疫染色法により肝細胞中にFas抗原を認め(投稿準備中)、またTUNEL法により肝組織中にDNAのfragmentationを認め、アポトーシスの存在が確認された(投稿準備中)。現在、自律神経中枢である視床下部腹内側核の破壊を行い、迷走神経の過興奮を起こし、各種消化管臓器について、再生などに関与する癌遺伝子がどのように関与しているのか、また、FasおよびFas ligandのmessenger RNA levelの発現は認められるのかをNorthen Blottingにより精力的に行っている最中である。
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