研究概要 |
1996年Abbott社は新しい肝炎ウイルスとして、アフリカからGB virus C(GBV-C)を、GenLab社はアメリカの非A非B非C型肝炎患者からHepatitis G virus (HGV)を、独立に報告した。両者はアミノ酸で95%も一致し同じウイルスの異なるgenotypeと考えられたため、ZuckermanはこのウイルスをGBV-C/HGVと表記することを提唱している。このGBV-C/HGVは、臨床的には輸血や血液製剤により感染し急性肝炎を引き起こし、慢性肝炎や劇症肝炎に関与していると考えられているが、その詳細は不明である。そこで、各種肝炎患者の血清からPolymerase Chain reaction (PCR)法でGBV-C/HGV RNAを検出したところ、献血者199例中1例、慢性肝炎患者144例中5例、肝硬変患者22例中3例、肝細胞癌患者27例中2例に見出だされた。しかしながら、その陽性率は各種病態とは特に関係を認められなかった。 つぎに、GBV-C/HGVのgenotypeについて検討した。世界各地の患者血清約2,000検体を集め、PCR法でGBV-C/HGV RNAを検出したところ145本が陽性であった。そのGBV-C/HGV RNA陽性例の5′-untranslated領域とNS5領域の塩基配列を決定し、分子進化学的な系統樹解析を行った。その結果、両領域の分子系統樹によるgenotype分類は完全に一致し、GBV-C/HGVは3つのgenotypeに分類可能であった。すなわち、GBV-Cが属し主にアフリカに存在しているGB type、HGVが属し主にアメリカに存在しているHG type、さらにアジアに主に存在するAsia typeである。これらのgenotypeを簡単に検出出来るように、各genotypeの特異的認識部位を探しだしRestriction fragment length polymorphism (RFLP)法によりGBV-C/HGVのgenotypeが決定出来るようにした。 以上が本年度の結果で、来年度はこのgenotypeと各種肝疾患との関係を検討する予定である。
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