研究概要 |
1996年新しい肝炎ウイルスとしてアフリカからGB virus C(GBV-C)とアメリカからHepatitis G virus(HGV)が報告された。両者はアミノ酸配列で約90%のhomologyがあり、現在では両者は同一ウイルスの異なるgenotypeと考えられ、現在GBV-C/HGVと表記されている。 このGBV-C/HGVは、臨床的には輸血や血液製剤により感染し、急性肝炎を引き起こし、慢性肝炎や劇症肝炎に関与していると考えられているが、その詳細については不明である。そこで、世界中の各種肝炎患者2,000名の血清からpolymerase Chain reaction法でGBV-C/HGV RNAを検出し、その陽性率と各種肝疾患との間の関係を検討したところ、特に有意な疾患は認めなかった。つぎに、そのgenotypeについて分子進化学的に検討したところ、GBV-C/HGVは3つのgenotype分類可能で、主にアフリカに存在している、GBtype、主に欧米に存在しているHGtype、さらにアジアに主に存在するAsian typeであった。そこで、これらのgenotypeを簡単に検出できるように、各genotypeの特異的認識部位を探しだしRestriction fragment length polymorphism(RFLP)法によりGBV-C/HGVのgenotypeが決定できるようにした。そして、genotypeと各種肝疾患の病態と比較したところ、特に病態とgenotypeの間に有意な関係は認められなかったが、アジアのB型肝炎ウイルス(HBV)陽性肝細胞癌ではGBV-C/HGVのAsian typeの陽性率が有意に高率であった。 一方、アジアのHBV陽性肝細胞癌では、p53のpoint mutationが関与しているといわれている。 そこで、GBV-C/HGVのAsia型genotypeとp53の関与を想定し、現在これらのアジアの肝細胞疾患者におけるp53ガン抑制遺伝子について遺伝子配列を決定し、その変異とGBV-C/HGVのAsian typeとの関係を検討中である。
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