研究概要 |
クローン病(CD)患者の病変部における特異的免疫応答の解明を目的として研究を行った。本年度は、CD患者の初期病変部アフタ様潰瘍部由来の粘膜固有層リンパ球(LPL)を分離した。具体的には、CD患者の内視鏡下生検組織を用い、Bullの変法によりEDTAとcollagenaseで処理することによりLPLを分離する。さらに磁気ビーズ標識抗体を用いてCD4陽性かつHLA-DR陽性の活性化T細胞(本症の免疫学的病態に最も関与していると思われる細胞群である)を分離した。このLPLより、mRNAを抽出し、T細胞抗原レセプターVβ1〜20に特異的なprimerを用い、RT-PCR法によりT細胞抗原レセプターのCDR3領域(いわゆるhypervariable regionに相当する)を含む領域を増幅し、この産物をdenatureしsingle strandの状態でpolyacrylamideゲルにより電気泳動しSSCP分析を行った。 この結果、CD患者より分離したLPLでは、きわめて高率に特定のVβにクローナリティーの存在を示すbandが確認された。比較的共通したVβサブタイプは、Vβ2,5.1,5.2,13.1,19などであった。このような変化は、潰瘍性大腸炎から分離したLPLやCD患者の末梢血には認められず、病変部に特徴的なものであった。さらに、CDに特徴的な病変である、非乾酪性肉芽種の好発部位である腸間膜リンパ節においても、同一のT細胞クローンの存在が確認された。このT細胞は、疾患特異抗原に対して反応増殖したものである可能性が強く示唆された。
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