クローン病の病変部(特に、二次的な炎症や感染の影響が少ない初期病変部)における、病因特異抗原の存在および、特異的な免疫応答をT細胞の特異的な活性化の面から明らかにすることを目的とし、疾患特異抗原の腸管粘膜での動態と粘膜免疫学的意義を明確にするためクローン病の病変部より得た組織を用いて、検討を行った。 1.クローン病の初期病変部より採取した粘膜固有層リンパ球をやクローン化T細胞株を用い、該当する細胞群のT細胞抗原レセプターのクローナリティーを解析した結果、クローン病の病変部では特有のT細胞レセプターが使用される傾向が明らかとなった。そのタイプは患者により異なる。しかしながら、同一人においてはskipした病変より同一のT細胞クローンが検出された。 2.クローン病の病変部に存在するT細胞を解析した結果CD4、CD45RO陽性のメモリータイプが主体であり、サイトカイン産生パターンではIFN-γやIL-12を強く産生するもののIL-4やIL-10の産生は弱かった。この変化は特に肉芽腫で著しかった 3.肉芽腫は、腸管内のリンパ管(VEGFR3により同定)内あるいは隣接して存在していた。このような変化は腸管壁全層ならびに腸間膜リンパ節にも見られた。また、このような部位の近傍にはMAdCAM-1陽性の血管が多数見られた。 以上よりクローン病では、特定の疾患関連抗原がリンパ管を介して侵入しT細胞をTh1優位に活性化していること、その調節にはMAdCAM-1などの細胞接着分子が重要であることが明かとなった。
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