昨年度までの検討で、腸管標本から組織をホモジェネートする際に使用する界面活性剤が試料中に混入することにより、質量マス分析において夾雑物による雑音が生じるために再現性のある信号がえられなかった。このため、本年度は界面活性剤であるNP40にかえてCHAPSを用いて試料抽出をおこなっており、このため質量マス分析に対する干渉を抑制できる可能性が考えられる。さらに、抗HLA-DR抗体を固相化したアフィニティークロマトグラフィーの分離液に使用していた界面活性剤を除外することにより高速液体クロマトグラフィーにおける分離能が向上した。上記ヒト腸管よりのHLA-class II bound peptidesの新たな分離法による逆相高速液体クロマトグラフィーの結果、クローン病の腸管よりペプチド分画と推定されるピークの分取に成功した。この分画に関しては、各患者において特定のパターンは認められず、ことなるアミノ酸配列から成るペプチドであると考えらたが。これらの抗原ペプチドが由来する蛋白質に関しては、抗原提示細胞における蛋白質の分解・抗原提示における段階において個体により異なるペプチド分画として提示されている可能性があるため、同一の蛋白質に由来するか否かはペプチドのアミノ酸配列を決定する必要がある。
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