研究概要 |
我々は、従来より、C型肝炎患者における肝炎ウイルス特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)を研究してきた。その結果、患者の末梢血からCTLが誘導できること、CTLがウイルスの量を抑制している可能性があること、同時にまたCTLはC型肝炎ウイルスが感染した細胞だけでなく、その周囲の非感染細胞をも障害する可能性があること、またCTLが存在するにも拘わらず持続感染が継続する機序として、C型肝炎ウイルスの変異したCTLエピトープがT細胞リセプター・アンタゴニズムという仕組みを介して宿主の免疫応答を抑制しているしている可能性を報告してきた。 以上のヒトにおける検討結果を踏まえて、強いCTL応答を誘導するワクチンは感染予防と治療目的のワクチンとして働く可能性があると考え、C型肝炎ウイルス・コア蛋白をコードするDNAを含むプラスミドを筋肉内に注射するDNAワクチンの検討を行って来た。ワクチンの強さを検討する対照として、組換えワクシニアウイルスを用い、コア蛋白特異的CTLを誘導することに成功した。この時のinvitroでの誘導条件を用いて、pMAMneo,pcDNA3,pEFBOS,pHBx等のプロモーターとコア蛋白をコードするDNAとの組み合わせを作製した。また、IL-2,GM-CSF,CD80,CD86等をコードするプラスミドをアジュバントとして作製し、最適の条件を決定すべく、現在、種々の組み合わせ検討中である。 従来、報告された方法を用いてもなかなか満足のいく結果は得られず、C型肝炎ウイルスの免疫原性にはtrickyな要素があると考えられ、より簡便で強いCTL応答が誘導できる方法の確立が必須のものと考えられた。
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