研究概要 |
本研究は,我々がクローニングしたRNA結合蛋白の意義を各種増殖因子との関連を含めて明らかにすることから,肝星細胞活性化機構を分子レベルで解明することを目的としたものである。肝星細胞では,増殖・コラゲン合成・平滑筋αアクチン発現が活性化の3指標とされるが,増殖とコラゲン合成・平滑筋αアクチン発現などの特異機能は本来解離して発現するのが一般的である。我々は既に,肝星細胞の増殖やコラゲン合成が抑制された際に,平滑筋αアクチンの発現がむしろ増強し,活性化の3指標が解離して生ずる場合があることを報告している。そこで本年度は,星細胞活性化の意義を明確にする目的で,各種増殖因子を添加した際の肝星細胞における3指標の動態に関する検討を行い,以下の結果を得た。 1.初代培養肝星細胞にbFGFないしPDGFを添加し,細胞周期を揃えて増殖に向かわせると,平滑筋αアクチン発現は減弱することが明らかとなった。この際,コラゲン合成とTGEβの発現は増強していた。 2.PDGF添加24時間後にBrdUと平滑筋αアクチンの二重染色を施行したところ,BrdU陰性細胞内部にはアクチン線維が高度に染色された。一方,BrdU陽性細胞にはアクチンの染色性が認められないものが多く観察された。 以上より,星細胞においても増殖と特異機能は個々の細胞レベルは,解離して発現すると考えられた。また,増殖促進因子の作用は二次的に誘導されるTGEβにより修飾される可能性が示された。来年度は,in vitroおよびin vivoで,星細胞における増殖および特異機能の発現をクローニングしたRNA結合蛋白との関連において検討し,星細胞活性化のメカニズムの詳細を明らかにして行く方針である。
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