研究概要 |
in vitrdにおける肝癌細胞におけるVEGF産生についての細胞分子生理学的検討 肝芽細胞腫継代培養株(HepG_2細胞)を大気コントロール培養チェンバー内で種々の酸素濃度下に培養し、その増殖はModified MTT Assayにて定量した。VEGF産生量については、培養液中の蛋白量として抗ヒトVEGFモノクロナール抗体(16F1:2E1)を用いたsandwich enzyme immunoassayで定量化した。VEGF遺伝子よりのmRNAの産生については、4種のVEGF mRNAすべて(VEGF206,VEGF189,VEGF165,VEGF121)に共通するプライマー、プローブを設計し、HepG2細胞より分離したポリ(A)+RNAを鋳型とした定量的reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法で分析した。予想されるPCR産物としてのDNA断片は、膜結合型VEGFでは、鎖長741bpと690bp、分泌型VEGFでは鎖長486bpと618bpであるが、本系では分泌型VEGFのみが検出された。低酸素環境における16時間培養にて、分泌型VEGFの蛋白レベルの放出とmRNAレベルの発現の著明な増加が確認された。VEGF受容体としてはIII型受容体チロシンキナーゼファミリーに属するflt-1とKDRの2種が知られてあり、この変化をみるために、まず、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養し、培養液を、HepG_2細胞の正常酸素下細胞上清と低酸素下培養上清にかえて、24時間正常酸素下で培養した。この時、VEGFの内皮細胞上に発現するであろう2種の受容体(flt-1、KDR)の発現について、RT-PCRにて検討した。この結果、flt-1の発現は、低酸素下HepG_2培養液では、有意に増強したが、KDRについては、増強傾向にはあるものの、有意な変化にはならなかった。また、この受容体発現の増強が、VEGF自体のhomol ogousな作用か、または間接的な作用かを確認するために、低酸素下HepG_2培養液中にVEGFのmRNAのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを前処置し、VEGFを低下させた低酸素下培養上清でHUVECを培養したところ、flt-1の発現は抑制されなかった。このことにより、VEGF以外の低酸素下培養上清中の物質によって、VEGF受容体発現が誘導されることが考えられた。このように、VEGFが血管新生という作用を発現するには、VEGF蛋白ばかりでなく、その内皮細胞側の受容体の発現もなんらかの因子によって増強されなければならないことがわかった。
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