研究概要 |
すでに我々は、HCV core蛋白を持続的に発現した肝細胞癌株の樹立を報告したが、これらのHCV core蛋白発現細胞株は、親株と比較し細胞増殖速度の低下を認めたが、そのままではアポトーシスをおこさなかった。一方、C型肝炎患者で肝細胞上のFas抗原の発現増強、及びFas Ligandを発現したCytotoxic T cellの増加が報告されており、C型肝炎におけるFas-Fas-Ligand系を介したアポトーシスの働きが重要しされている。これらの事実に基ずき、HCV core蛋白のFas-Fas-Ligand系を介したアポトーシスへの影響に関して検討した。その結果、抗Fas抗体を加えると、HCV core蛋白発現細胞株のみ有意にアポトーシスが認められた。しかし、両者間にFas抗原の発現に明らかな差は認められなかった。以上の事実より、HCV core蛋白が直接細胞にダメ-ジを与えないまでも、Fasを介したアポトーシスを増強させることが明らかとなった。現在アポトーシス関連遺伝子、分子に関して検討中である。 次に、治療、ワクチン開発に関してであるが、我々はすでにHCV core遺伝子を用いたDNAワクチンを開発し、マウスにおいてHCVに対するCytotoxic T細胞の誘導に関して成功している。しかし、従来の方法では、Cytotoxic活性は強くなく2.0%前後であった。この原因は、HCV core蛋白が非分泌型の蛋白で、CD4Tを誘導できずに最終的にCytotoxic T細胞も効果的に誘導できないためと考えられた。そこで、Cytotoxic T細胞の誘導を助けるサイトカイン(IL-2,IL-4,GM-CSF)のDNAワクチンを併用したところ、HCV coreとIL-2のDNAワクチンの併用によってin vitro cytotoxic活性が50%と飛躍的に上昇した。今後は、この手法でDNAワクチンを接種したマウスに、HCV core蛋白を発現した同種の腫瘍細胞を投与し、in vivoにおけるCytotoxic T細胞の誘導能を検討する予定である。
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