我々は、HCVの新たな予防、治療法の開発のため、DNAワクチンとantisense RNAに取り組んできた。 1)マウスにおいてHCV特異的なキラーT細胞を誘導し、さらに誘導効率をあげるために、サイトカインのDNAワクチンを試みた。その結果、IL-2とGM-CSFのDNAワクチンとの併用療法で、CTL活性およびproliferation assayの増強が認められ、特にIL-2との併用でkilling活性を50%まで上昇させることに成功した。 2)次に、HCV core geneにHBs geneを結合させたDNAワクチンConstructを作製し、HBsと結合させることによって発現蛋白を分泌型に変え、一つのConstructでさらに効率よくHBVとHCVの2つのVirusから防御できるワクチンを作製することを試みた。その結果、Pre S2+ HCV core(1 aa.-154 aa.)のDNAワクチンConstructを投与したマウスで、抗HBs抗体と抗HCV core抗体の産生を認め、その抗体価は、先のHCV core DNAワクチンより高値であった。また、細胞性免疫の検討では、このDNAワクチンを投与されたマウスの脾臓リンパ球は、HCV coreとHBs抗原を表出したそれぞれのCell Lineに対しKilling活性を示した。3)さらに、新たな治療法の開発のためHIV感染症に対して取り組まれているAntisense RNAの基礎的研究をおこなった。Antisense RNA constructの開発のため、5'-noncoding regionとcore regionを含む7つのAntisense RNA constructを作製し、in vitro translation systemを用いてHCV core蛋白の発現抑制効果に関して検討した。その結果、5'-noncoding region全領域とcore領域の開始コドンから約60bp(nt 1-nt 402)を含むAntisense RNA constructにおいて、約50%のHCV core蛋白の発現阻害効果が認められた。さらに、このAntisense RNA constructとHCV-luciferase発現constructを、HuH7細胞へのco-transfectionして、luciferase活性にてAntisense RNAの抑制効果を調べた。その結果肝癌細胞内でも同様に約50%程度のAntisense RNAの抑制効果が認められた。
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