研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)がインターフェロン(IFN)抵抗性を発揮する上で非構造タンパク質NS5Aと構造タンパク質であるコアタンパク質の両方が重要な役割を果たしている結果を得た. 1. INFで誘導される二本鎖RNA(dsRNA)活性化PKRを精製できた.大腸菌発馴PKRを精製し,ホスファターゼを作用させると,PKRはdsRNA依存的な自己リン酸化活性を示した. 2. この組換え体PKRの自己リン酸化とeIF-2αを基質にしたリン酸化活性を指標に,NS5AのPKR活性化に及ぼす影響を試験管内で見たところNS5AはPKRの活性化を抑制した. 3. HCVのウイルスタイターが高いとIFN耐性となる.その原因としてRNA結合タンパク質であるコアタンパクに着目した.コアタンパク質のRNA結合能を解析してみると,コアは塩基配列非依存的にdsRNAに強く結合することがわかった.ゲルシフトアッセイによりコアタンパク質のdsRNA結合能を組み換え体PKRと比較すると,コアタンパク質の親和性定数はPKRの1/4〜1/8倍程度を示した.すなわちコアタンパク質が高発現の場合,コアが複製中の二本鎖RNAに結合してPKRの活性化を抑制する可能性が考えられる. 4. そこで組換え体PKRを用い,試験管内でPKR活性化の阻害効果をPKRの自己リン酸化とeIF2αのリン酸化で見たところ,コアが濃度依存的にPKRの活性を抑制した.このことはHCVのインターフェロン抵抗性が幾つかの異なる経路で発揮されていることを示唆している.
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