研究課題/領域番号 |
09670588
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 福岡大学 (2000) 久留米大学 (1997-1999) |
研究代表者 |
向坂 彰太郎 福岡大学, 医学部, 教授 (90158923)
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研究分担者 |
大石 正仁 久留米大学, 医学部, 助手 (80289412)
古賀 浩徳 久留米大学, 医学部, 助手 (90268855)
原田 大 久留米大学, 医学部, 助手 (00241175)
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研究期間 (年度) |
1997 – 2000
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キーワード | VEGF / 肝再生 / 肝細胞 / in situ hybridization / 類洞内皮細胞 |
研究概要 |
血管新生は癌細胞の増殖や組織の創傷治癒に対し必要不可欠な現象である。近年、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)が発見され、血管新生における中心的な役割を担っていることが明らかにされてきた。しかしながら、肝再生におけるVEGFの役割についてはまだ不明な点も多い。今回の我々の研究では、70%肝部分切除後肝再生ラットモデルを用い、VEGF発現の肝小葉内局在とVEGFの役割について検討した。VEGFの発現は抗VEGF抗体による免疫組織化学染色とVEGF mRNAに対するRNA probeを用いたIn situ hybridization法にて検討した。また肝再生おけるVEGFの働きを検討するため、VEGF中和抗体およびVEGFタンパクを同ラットモデルに投与し、肝類洞内皮細胞と肝細胞の増殖活性に与える影響を検討した。再生肝ではVEGFおよびVEGF mRNAは主に門脈域周囲の肝細胞に認められ、またVEGF発現は肝切除後36-48時間目にピークを認めた。一方、肝類洞内皮細胞の増殖活性は門脈域周囲、中間帯、中心静脈周囲ともに肝切除後72時間目にピークを認めたが、その増殖活性は門脈域周囲で有意に強かった。またVEGF中和抗体を用いると肝類洞内皮細胞および肝細胞の増殖活性は有意に抑制され、逆にVEGFタンパクを投与するとそれらの増殖活性は有意に促進された。以上のことから、再生肝におけるVEGFは主に門脈域周囲の肝細胞から産生され、パラクライン作用により肝類洞内皮細胞を増殖させ、肝類洞の再構築を通して肝細胞の増殖が促進され、円滑な肝再生が行われることが示唆された。我々のこれらの結果は、肝癌の治療や肝移植のための外科的肝切除後、あるいは予後不良な劇症・重症肝炎などの肝障害後における肝再生の促進因子として、VEGFが新しい臨床的治療薬になる可能性を示唆している。
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