1.健常ウサギと亜硫酸ガス曝露慢性気管支炎モデルウサギの気道粘膜上皮細胞におけるCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)のmRNAの発現を比較した。気管支炎モデルウサギで強く発現し健常ウサギにはこれを認めなかった。CFTRは細胞内cAMP依存性の塩素イオンチャンネルであり、これが慢性気管支炎モデルウサギの気管粘膜上皮において新たに出現する塩素イオン電流の原因であると考えられた。慢性炎症性気道の過分泌の原因の一端を明らかにした。2.気道粘膜下腺で観察される塩素イオン電流は水分分泌の指標とされる。エリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質は、アセチルコリンによって惹起される塩素イオン電流を臨床的な濃度範囲において濃度依存性に抑制した。これら低濃度のマクロライド剤は単独では反応を起こさなかったが、mMオーダーの高濃度では単独でアセチルコリン様の電流反応を惹起した。この反応はムスカリン受容体拮抗剤であるアトロピンによって消失した。低用量マクロライドはしかし、ノルアドレナリン、カフェイン、イオノマイシンなどによる電流に影響しなかった。以上より、臨床用量のマクロライドには抗コリン作用があることが示された。3.気管支喘息は、慢性好酸球性気道炎症として認識されており、好酸球が放出するMajor Basic Protein(MBP)は気道上皮傷害や気管支平滑筋の収縮を惹起することが知られている。しかし気道平滑筋収縮を惹き起こす細胞機構についてはいまだ報告を見ない。MBP類似の多価陽イオシであるpoly L Arginineおよびpoly L Lysineを用いて、これらがカルシウム依存性カリウムチャンネルを阻害し、その開口確率ならびに電気伝導度を有意に減少させることにより、気道平滑筋細胞膜の脱分極を起こしこれが細胞外からのカルシウム流入をもたらす原因となることを見い出した。
|