1. 風邪誘発気管支喘息の病態を研究するため、minor groupに属する2型ライノウイルスの感染受容体と気道上皮細胞の炎症性サイトカインおよび受容体であるLDL受容体の合成に対する作用を調べた。培養ヒト気管上皮細胞を用いると、2型ライノウイルスおよびサイトカインIL-1β、IL-6、IL-8、TNF-αの培養上清放出量は抗LDL受容体抗体で減少したため、minor groupライノウイルスはLDL受容体を介して感染することが明らかになった。また、ライノウイルス感染後LDL受容体合成が亢進した。ライノウイルスの反復感染との関係が示唆された。 2. 気道上皮透過性亢進は気管支喘息の主要な病態である。気道上皮透過性を電気生理およびマンニトール透過性で調べた。過酸化水素は培養ヒト気管上皮細胞の透過性を亢進したが、ライノウイルスを感染させた場合、透過性亢進が更に増加した。ライノウイルス感染が気道のバリヤー機能を低下させることが明らかになった。 3. 風邪誘発気管支喘息の治療法を研究するため、ライノウイルス感染抑制と炎症性サイトカイン合成抑制について調べた。グルココルチコイドおよびエリスロマイシンは培養ヒト気管上皮の接着分子ICAM-1合成を抑制してライノウイルス14型感染を阻害した。また、ライノウイルス感染後の炎症性サイトカイン合成も抑制した。更に、マクロライド系抗生物質に属するバフロマイシンは細胞膜のH^+ATP酵素活性を抑制してライノウイルスの細胞内侵入とその後のライノウイルス合成を抑制することが明らかになった。これらの薬品はライノウイルス感染阻止とそれに続く気道炎症を抑制して風邪誘発気管支喘息の治療法として期待できると考えられた。
|