研究概要 |
平成10年度研究業績 (1) 前年度の研究より、低酸素状態に暴露された動物の横隔膜筋は収縮力の一過性の低下と、筋線維の横断面積に変化が認められ、3週間後にはコントロール側に復帰するような反応が認められた。今年度は低酸素負荷時の横隔膜筋組織での生化学的変化を検討した。 (2) Hemo oxygenase(HO)の蛋白発現の検討・・・コントロール群、低酸素1、3、7、14、21日負荷後の横隔膜筋組織を摘出しホモジネートし、蛋白質を抽出する。ウエスタンブロット法により、HOの抗体を用いて、各群の筋組織内におけるHOの蛋白発現について検討した。HO-1は、低酸素第1日目に有為の発現がみとめられ、早期に誘導されたがその後は減少していた。HO-2は横隔膜筋での発現は見られなかった。HOはスーパーオキサイドに対して防御的に作用する。 (3) NO synthase(NOS)の蛋白発現の検討・・・スーパーオキサイドの一つであるNO産生に関連するNOSの発現について、同様にウエスタンブロット法で検討した。誘導されるところのiNOSは第1日目に低下していたが、その後増加した。一方、横隔膜筋細胞内にあらかじめ存在するeNOSは低酸素負荷のほぼ全期間にわたって増加していた。 (4) 以上の結果から、低酸素負荷の早期にスーパーオキサイドを防御するHO-1が増加し、相対的にiNOSが減少し、これらが早期の細胞障害に対して防御機構として働いていることが推察された。一方、その後は継続的なeNOSが見られ横隔膜筋の適応反応に関与している可能性が推察された。横隔膜筋は吸気筋としてその発生張力の減少が呼吸筋不全に密接に関係するが、本研究により、低酸素状態における横隔膜筋収縮力の変化の機序として筋組織内のHO-1,iNOS,eNOSの発現とが密接な関係にあることが結論づけられた。
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