研究概要 |
『目的』 線維化肺の発症と進展機序におけるエンドセリンの役割について、これまで線維化動物モデルや遺伝子導入実験で明らかにしてきた。今年度はヒト線維化肺の進展過程におけるエンドセリンアイソフォーム(ET-1,3)及びエンドセリン受容体サブタイプ(ET A,ET B)の発現相違性を検討し、肺線維症発症機序におけるエンドセリンの意義を解明する。 『方法』 1、気管支肺胞洗浄(BAL)液のエンドセリン濃度:特発性間質性肺炎、サルコイドーシスなどの同一患者の肺CT像上、線維化が優位な部位とそうでない部位の2ケ所よりBALを行ない、エンドセリンアイソフォーム濃度をEnzyme Immunoassay法で測定する。2、生検組織上のエンドセリンアイソフォーム及びエンドセリン受容体サブタイプの局在:患者の同意を得て、開胸肺生検にて採取した肺組織を4% paraformaldehide固定標本、及び凍結標本を作成する。ET-1,3及びET A,ET Bについて、in situ hybidyzation,immunohistochemistryの手法を用いて、それぞれの肺組織内での局在・発現の優位性を検討する。 『結果』 線維化肺を有する同一患者の肺組織でCT像上線維化が強い部位のBAL液中ET-1濃度は線維化が弱い部位より低い傾向にあった。ET-3濃度には差は認めなかった。エンドセリン濃度とBAL液中細胞成分とは相関関係は認めなかった。開胸肺生検組織を用いた検討は現在進行中である。 『考察』 線維化肺の進展過程においてエンドセリン、特にET-1はET-3より重要な役割を担っていることが示唆され、今後肺局所におけるエンドセリン受容体発現との対比が大切である。
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