研究概要 |
間質性肺炎の急性期は、炎症性細胞侵潤を伴う胞隔炎が主病態である。肺内に集積した炎症性細胞や血管内皮細胞等の肺組織構成細胞より産生されるサイトカイン・増殖因子・接着分子等が、漸次進行する後期の線維化病態に関与し、肺組織再構築(リモデリング)が進行すると想定されている。 Vascular biologyの分野で研究されてきたエンドセリン(ET)は、全身の臓器に分布し組織局所における病態生埋的役割の多様性が最近注目されている。私共はETの細胞増殖・遊走作用に注目し,慢性期ヒト間質性肺疾患患者(特発性間質性肺炎、サルコイドーシス、過敏性肺臓炎)の気管支肺胞洗浄液(BALF)を詳細に検討した。その結果、肺線維化に関与すると考えられてきたTransforming growth factorβ(TGFβ)よりも慢性期ではETが増加し、さらにET濃度がBALF中コラーゲン量、肺機能低下と密接に関係することを見い出した。またハムスターのプレオマイシン(BLM)実験肺線維症モデルを用いて、ET分泌がBLM投与により肺内で長期にわたり増加すること、エンドセリンtypeA受容体拮抗薬がBLMによる肺線維化を著明に抑制することを見い出した。さらにETの肺線維化への関与を明らかにするため、ET-1 cDNAをCMVプロモーターを有する発現ベクターに組み込み、Cationic lipid componentと混合してラット生体肺内に導入すると、1週後に著明な線維化が形成された。対照としてβ-Gal遺伝子を同様の方法で導入したが、著明な線維化は形成されなかった。 以上の点は肺内に増加するETが肺の線維化過程に重要な役割を演じていることを証明し、ET受容体拮抗薬による新しい治療法の可能性を示唆した。
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